ドビュッシー「夢想」より

あなたによびかける
はるかからくる声
ねえ
大事なものというのは
気がめいるほど
遠くにあるわけではなく
思いどおりになるほど
近くにあるわけでもないの


負うものを持って
生かされてきた
なにかが本当に
望むこととはちがって
目をつむり
つめたい空気に抱かれ
夢を見ていた


きえない十字架
絶えずめぐるこの世界で
流れゆく血潮だけど
あなたがうたを
見つけたならば
それが約束の朝のはじまり


心が
夢想をみている
どうか気づいて
愛も憎悪も
こえたところから
きこえるでしょう
うたが
照らしだすうたが
昔の灯火
かすかな木漏れ日
さやかな約束




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